素材の違いについて
ボールの中身は空気ですが、その周りは何層にもなっています。
まず一番中には、ラテックスでできたチューブが入っており、それを保護する目的で裏打ち布がされています。そのさらに外にはポリウレタン層が形成されており、この部分がキックのタッチを多く左右すると行っていいでしょう。一番外側に表面層があります。パネル枚数や表面の空気抵抗を減らす工夫など目に見えて違いが出る部分でもあります。
下の動画は2010年のW杯で使われたジャブラニというボールの作製過程のビデオです。33秒程度の頃に写っているオレンジ色の物がチューブです。
実はこのチューブが安いボールと高いボールの大きな違いを生み出しています。
天然ラテックスチューブ | ブチルラテックスチューブ | |
---|---|---|
長所 | 反発力に優れ、良く飛ぶ | 空気が抜けにくく、扱いやすい |
短所 | 空気が抜けやすい | しっかり蹴っても、飛びにくい |
値段 | 天然ラテックスを使用しており高い。1万円以上する。そもそも量販店では扱っていることが少ない。 | 安価。どこでも入手可能。 |
採用シーン | ボールの反発が良いため、柔らかい芝生グランドで使用される。 | ボールの反発が悪いため、堅い土のグラウンドで使用される。 |
上の表に、ブチルラテックスと天然ラテックスの特徴を挙げました。
ブチルラテックスというのは、合成ゴムです。タイヤのような黒い色をしています。
基本的にブチルラテックスのボールでは黒い色のチューブが多い傾向にありますが、カーボンラテックスという同じく黒色のチューブも有り、実際には合成ゴムの石油のにおいなどから総合的に判断します。
ブチルラテックス採用のボールを説明のため切ってみました。
切ったのは、moltenのFF5055という2000円程度で昔購入した安価なボール。
ブチルラテックスのチューブはこのように合成ゴムの黒い色をしています。
ボールの裏側はこのようになっています。パネルの継ぎ目は、糸で縫い付け接合されていることが分かります。
つぎに断面を解説します。黒い部分は内側のチューブで内側に保護層として裏打ち布がされており、その外側にポリウレタン(PU)層が確認できます。
このボールではチューブ保護のための保護バルブが確認できます。
パネルの接合が糸によりされていることが分かります。これを熱による圧着で行ったものが、サーマルボンディング方式のボールです。
上の写真のように、中身を切って見ることが確実ですが、分かりやすいのは蹴ってみたときの”音”です。しっかりとボールに空気を入れ蹴ってみましょう。キーンと金属的な音がするボールはブチルラテックスのボールです。ただ、おそらく多くの方が持っているのはブチルラテックスのボールです。なぜなら、天然ラテックスのボールは値段が高いから。
一長一短がある両材質ですが、このサイトを見てくれたからには是非天然ラテックスボールの持つ”軽さ”を体験して欲しいのです。